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1 定額残業代制度の問題点

基本給に上乗せして定額で残業代を毎月支払っているから残業代の問題は生じない。
このようにお考えの経営者の方は意外に多いです。
ですが、この考え方は非常に危険です。

まず、労働基準法37条では、残業代の支払方法等が法定されています。
そして、同条は、強行法規とされております。
なので、仮に、労使が同条と異なる合意をしたとしても法律の定めた計算方法等が優先されます。
そのため、いくら定額の残業代を定めていたとしても、実際の残業代が定額分を上回っていた場合、その差額分の残業代を支払わなくてはなりません。
具体的にいうと、定額分を5万円と定めていたとしても、実際に計算した残業代が10万円であれば、その差額の5万円は支払う必要があります。

そして、定額残業代制度には、そもそも定額残業代として定めていたものが、残業代として支払ったものといえるかという根本的な問題があります。
たとえば、定額残業代として、職務手当という名目で支払っていた場合など問題となります。
この場合、そもそも残業代の支払いであったのか自体が大きな問題となり、仮に残業代の支払いとして認められなかった場合、残業代の支払いを一切していなかったことになります。

2 定額残業代の該当性

まず、基本給と残業代(割増賃金)にあたる部分が明確に区別されて合意されていることが必要です。
また、定額分以上の残業代が発生した場合に、その差額を当該賃金の支払期に支払うことが合意されていることも必要です。

具体的に、先ほどの職務手当の例で考えてみたいと思います。
まず、企業は、定額の残業代として職務手当を支給していたとします。
当然、企業としては残業代の支払いとして職務手当を支払っているという意思です。

しかし、まずその職務手当が残業代の支払であることが明確に合意されていることが必要です。
たとえば、就業規則や雇用契約書の記載です。
これらに明確に職務手当が残業代の支払いとなっているかがそもそもの問題となります。
また、定額分以上の残業代が発生した場合に、残業を行った月の給与で適切に支払うという合意も必要です。

3 定額残業性が否定された場合

仮に、職務手当の名目で定額残業代として支払っていたものが、残業代に当たらないとされてしまった場合、まず、残業代(割増賃金の額)を計算するにあたって、その職務手当の金額も含まれる残業代を計算する基礎の計算に含まれることになります。
つまり、残業代を計算するにあたって、手当分の相当額がその分高額になります。
企業としては、残業代として手当を支払ったつもりであったのに、さらに残業代を支払わなくてはならず、しかも制度のミスでより高額な残業代が発生してしまうということになります。

また、定額残業代と思っていた職務手当が残業代として認められなかった場合、残業代を全く支払っていなかったことになりますので、裁判まで発展した場合には付加金の制裁を受けることがあります。
なお、付加金とは、裁判所が未払い賃金の2倍に相当する金額まで支払を命じてくる制度です。
そのため、付加金まで発展した場合の経済的負担は相当大きくなることが見込まれます。

4 定額残業代制度の意味

以上、定額残業性は、残業代を安く抑えるという使い方はできません。
残業代を安く抑えることを目的に定額残業代を導入している方は、早急に制度の改善を行うべきです。
高額な残業代請求がなされるリスクが潜在し続けることになります。

法的側面からすると、定額残業代制度は、使用者側にとって、定額分の残業がなかった場合にも残業代を支払うというものに過ぎないことになります。
もっとも、一定時間は残業して給与を増やしたいという従業員もいます。
これらの従業員からすると、定額分の残業代が決められていれば、その分の残業を行って給与を増やせるということモチベーションにもなります。
また、残業が仮になくとも定額分の残業代は保障されるという意味で賃金保障的な意味もあります。
これらの意味で導入する分には何ら問題はありません。

もっとも、残業代を抑える目的での導入は、絶対にやめておくべきです。

当事務所は、定額残業代制度の問題を取り扱っております。
定額残業代制度の問題に関するご相談は、是非当事務所をご検討ください。