SNSに会社の誹謗中傷を匿名で投稿されたが、社員が投稿した可能性が高い。
早急に削除しなければ事実無根の風評被害が発生するおそれがある。
特定の社員を誹謗中傷するような投稿がされている。

このような相談を受けることがあります。

SNSのメッセージは拡散されるおそれがあります。
拡散された場合、投稿者が削除したとしても、拡散された投稿がインターネット上に残り続けることになります。
そのため、SNSへの不適切な投稿は早急に対応すべきことが多いです。
事実無根の「ブラック企業」などとの誹謗中傷は当然のことながら、社員が浮気をしている等、特定の社員を誹謗中傷する投稿も計り知れない風評被害となることがあります。

当然、社員の私生活上の個人の自由に関することまで会社が規制することはできません。
なので、社員に全てのSNSの使用を禁止するということはできません。
もっとも、社員は、労働契約上の付随義務として、会社の社会的信用を毀損してはならない義務を負うと解されます。
そのため、会社の社会的信用を毀損するような投稿は制限することができると考えられます。
また、就業規則上、会社の信用や名誉を毀損した場合を懲戒事由と定めていることは多くあります。
懲戒事由と定めている場合は懲戒処分も可能となります。

SNSへの不適切な投稿は、投稿者自身に削除させることが一番簡易です。
そのため、投稿者を特定することをまず検討すべきです。
もっとも、フェイスブックであれば氏名が判明しやすいですが、Twitterであれば匿名で投稿されるために氏名が判明しづらい傾向にあります。
その場合、他のツイート(投稿)から誰の投稿かを推測していくことになります。
なお、それでも判明しない場合は、SNSの運営会社に対して、IPアドレスやタイムスタンプの発信者情報の開示を求めていくことになります。
この場合、仮処分や訴訟などの法的手続きが必要な場合があります。

次に、証拠の保全が必須です。
再発防止のためには投稿者を処分することが必要ですが、投稿者であれば投稿を削除することができますので、投稿を印刷するなど証拠の保全が必須となります。
そして、投稿者が特定できた場合は、投稿者に対して事実確認を行うべきです。
投稿をしたのが当該社員であるのか確認し、投稿したとしてもどういう目的で投稿したのか弁明の機会を与えるべきです。

その後、懲戒処分を検討すべきことになります。
単に会社の愚痴を述べる程度で会社の社会的信用を大きく下げるような投稿でない場合は、あまりに重い懲戒処分は不相当とされます。
もっとも、メッセージが拡散されることなどのSNSの危険性を理解させ、注意や指導を行うことは検討すべきです。
また、会社の誹謗中傷にあたる投稿は、直ちに削除を求めるとともに、会社を誹謗中傷する投稿を行わないことを誓約させるべきです。
それでも誹謗中傷する投稿を繰り返す場合等は、懲戒解雇を含めた懲戒を検討することになります。

SNSへの誹謗中傷等の不適切投稿はないに越したことがないですが、社員が愚痴程度の認識で悪意なく投稿してしまう場合もあります。
また、悪意で投稿する場合もあります。
いずれにせよ、不適切な投稿がなされた場合には、会社側が懲戒処分等で対応できるように、社内規程を整備しておくべきです。
会社の信用を害する投稿、社員間を誹謗中傷する投稿、業務上知りえた情報の漏洩等の投稿を規制し、不適切な投稿は懲戒処分の対象となることを社内規程で整備すべきです。
当然、軽微な投稿に重い懲戒処分を下すことは違法となりえますので、投稿内容に応じた処分を行っていくべきです。

また、社員にSNSの危険性を理解させるためにも、SNSの利用の危険性や会社が規制する投稿に関する研修を実施しても良いと思われます。
研修において不適切な内容の投稿を理解させることで、不適切な投稿を抑止できることになります。
また、仮に不適切な投稿を行った場合、研修でも注意喚起したことを当該社員に指摘できるようになります。

以上、SNSへの不適切投稿は、事実無根の風評被害防止のためにも、今後、会社が取り組んでいかなければならない問題です。
不適切投稿にお困りの場合や不適切投稿を防止するための規定の整備を検討されている方は是非当事務所にご相談ください。

関連記事はこちら