1 フランチャイズ契約における情報提供義務

フランチャイズ契約の締結前に本部が売上予測を示して加盟店側の加盟を促すということが多くあります。

そして、事前の売上予測などの説明と違い、予測していた売上が上がらないというトラブルが多くあります。

事前の説明を信じてフランチャイズ契約を締結した加盟店からすれば、本部に騙されたと感じる方もいると思います。

他方、フランチャイズ契約は、事業に関する成否のリスクを加盟店が負って加入するものでもあります。

もっとも、本部が虚偽や誇張の説明をして良いというわけでもありません。

そこで、本記事では、このような本部の情報提供義務違反についての概略をご説明させていただきたいと思います。

 

2 情報提供義務の考え方

先ほども述べたとおり、フランチャイズ契約は、加盟店が事業成否のリスクを負って締結するものです。

そのため、出店する地域のことや出店立地の良し悪しなど、何から何まで本部が調査すべき義務もありません。

原則的には加盟店が情報を調査・吟味してフランチャイズ契約締結という経営判断を下すことになりますので、本部に積極的に売上予測まで提示すべき義務はないとされるのが一般的です。

よって、加盟店側は、本部に自らが出店する場所の正しい売上予測すべき義務があると主張しても通用しない可能性が高いです。

もっとも、本部としても、虚偽などの説明をしてよいわけではありません。

実際、本部がフランチャイズ契約締結前に売上予測を出してフランチャイズ契約の締結を促すということは多々あります。

本部としては、加盟を促したいあまりに、希望的観測を交えた数字で売上予測を示してしまうということはありえることです。

そこで、虚偽や合理的根拠に基づかない売上予測を信じ、誤信して加盟した加盟店には情報提供義務違反があるとされることがあります。

つまり、本部は、積極的に売上予測を出すべき義務までがないとしても、売上予測を出す場合には、合理的根拠に基づいた売上予測を出すべき義務があるといえます。

提示された売上予測の算定根拠が合理性を欠いたり、達成が著しく困難であるのに達成可能であるかのように売上予測を示して誤認をさせたうえでフランチャイズ契約を締結した場合は、ぎまん的顧客誘引として独占禁止法違反の問題も生じえます。

 

3 情報提供義務違反について

本部が売上予測を示した場合、本部が通常想定される水準の調査や商圏分析を行ったうえで予測を算定していれば、情報提供義務がないとされます。

逆に、通常想定されるレベルでの調査等をしていないのに売上予測を出していたのであれば、情報提供義務違反となる可能性があります。

そのため、本部としては、売上予測を出す場合には通常想定される調査をしたうえで出さなければなりません。

後の紛争を防止するためにもどのような算定根拠で出したのかを合理的に説明しておけるようにする必要があります。なお、商圏の調査もそうですが、競合店に関する調査も判断の一つになりますので、競合店の調査も含めて売上予測を出す必要があります。また、調査の人員不足を指摘する裁判例もありますので、具体的にどのような調査をしたのかも後に提出できるようにしておくのがよいでしょう。

これに対し、加盟店側は、売上予測がどのような根拠に基づいてされているのか確認しておく必要があります。虚偽であれば加盟店側が被害者と言いやすいですが、逆にある程度慎重に考えれば、売上予測の数字が甘い予測であることが分かる場合や加盟店側に経験値がある場合などは、誤信が本部の責任といえず、加盟店の責任として情報提供義務が認められないということも十分ありえます。加盟店側としても、安易に信じず、誤信したことが本部の責任と言える程度は調査する必要があるといえます。

 

4 フランチャイズ契約でのトラブルを防ぐために弁護士に依頼するメリット

情報提供義務の問題は、フランチャイズ契約締結前に予防を検討しておくべきです。

そのため、トラブル防止には、契約締結時の説明内容や契約書の内容が重要になってきます。

本部側としては、売上予測を合理的な根拠に基づいて算定していると説明できるかが問題となります。たとえば、近年の無人飲食業態などのように、新しい業態のビジネスで不確定要素が多い場合には、どのように売上予測をしたか、それが合理的といえるかが重要になってきます。場合によっては、契約書などに売上予測が未知であることを明確に明記しておくことも考えるべきです。

逆に加盟店側は、本部からの売上予測を鵜呑みにせずに、一定の調査を行うなど、加盟店としてすべきことをしておく必要もあります。

当事務所ではフランチャイズ契約におけるトラブルの対応を取り扱っております。契約締結前の契約書の確認や売上予測についての問題も対応させていただいております。本部には本部側のアドバイスが可能ですのでメリットとなります。逆に、加盟店には加盟店側のアドバイスが可能です。

フランチャイズ契約に関するご相談は当事務所までご連絡ください。