フランチャイズ店を出店してみた直後、近隣に同じフランチャイズ店舗ができた場合、自店舗の売り上げが下がる可能性があります。
本記事では、フランチャイズ店舗におけるテリトリー制について、契約時の確認ポイントを踏まえ、企業法務分野に知見のある弁護士が解説いたします。
目次
1 テリトリー制とは
フランチャイズ契約において、販売地域や営業区域が設定されることがあります。
フランチャイザーがフランチャイジーに対して、販売地域を指定することをテリトリー制と呼びます。
2 テリトリー制の内容
テリトリー制は、テリトリー内での完全な独占権が付される場合もあれば、優先的に出店ができる権利を付与するなど、契約内容によって付与される権利は様々です。
たとえば、飲食店で特定の地域(●市、●県など)での完全な独占権が付与される場合は、テリトリー内に他のフランチャイジーの出店、直営店の出店が基本的にありません。
宅配などのデリバリー系のフランチャイズでは、営業区域外から注文があっても、受注してはいけないというものもあります。また、広告も営業区域内だけしかしてはいけないというものもあります。逆に、注文があった場合は、営業区域外の受注は可能というものもあります。
3 フランチャイズ契約の確認ポイント
このように、テリトリー制といっても内容は多岐にわたります。
フランチャイジーとしては、何が保障されているのかテリトリー制の内容を確認しておくことが大切となります。
特に、近隣に他のフランチャイジーが出店してくることがないか、本部(フランチャイザー)が近隣に直営店を出すことがないかを確認しておく必要があります。
これに対し、フランチャイザーとしては、テリトリーを与えない場合は誤解がないように説明すること、与える場合はテリトリー内で直営店が出せなくなるリスクもありますので慎重に加盟店を選ぶことが注意事項となります。
また、テリトリー制を与えた加盟店の業績が不振な場合などの対策を考えておく必要があります。
4 近隣への同種フランチャイズの出店について
テリトリー内での独占的な出店を契約で定めた場合は、本部もテリトリー内で直営店を出すことができません。テリトリーを侵害する出店をしてしまうと損害賠償などのリスクを負います。
これに対し、独占的なテリトリー制を定めていない場合はテリトリー内への直営店の出店、他のフランチャイジーによる出店も可能です。近隣への出店も可能ということになります。
もっとも、契約書にテリトリー制を定めていない場合でも近隣への出店がノーリスクというわけではありません。
契約締結の交渉過程や契約書の文言などによっては近隣への出店を配慮すべき義務が課される場合があります。
また、テリトリー制に関することはフランチャイズ・ガイドラインにおいて十分な情報が開示されていることが望ましいとされています。そのため、近隣への出店を予定している場合は特に契約前に説明をしておくことが望まれます。実際に、出店予定地に他の出店が予定されているにもかかわらず、事前に説明されていなかったことで説明義務違反とされた判例も存在します。
5 近時の裁判例
学習塾を運営する本部がフランチャイジーの運営する加盟校の近隣に直営店を開校したことが独禁法違反となるとして、開校の差し止めを認めたというニュースがありました(2023.11.21)。
おそらく本部が近隣に開校したということは、契約書に独占権を付与するテリトリー制が定められていなかったと思われます。本部としては、契約書に定めがないので、近隣に直営店を開校しようとしたと思われます。
もっとも、裁判所は、独禁法違反により開校の差し止めを認めています。決定文などの詳細は判明していませんが、恣意的な目的による開校とされ、独禁法違反が認められたと思われます。
今後、フランチャイジーの近隣に出店する場合は、目的などもしっかり吟味して行うべきといえます。
6 当事務所でのサービス
テリトリー制の問題は、まず契約書の定めが最重要です。
当事務所では、フランチャイザー、フランチャイジーのどちら側でもフランチャイズ契約のリーガルチェックが可能です。
フランチャイザー側では、テリトリー制を認めることのデメリットや加盟店の売り上げが芳しくない等の場合の対策などもご相談いただけます。
フランチャイジー側では、テリトリー制の有無を含めて、どのような権利が付与された契約なのか、契約内容でどこまで保護されるかなどを分析させていただきます。
また、近隣に出店された場合のフランチャイジーのご相談、近隣に出店しようとしている場合のフランチャイザーのご相談も可能です。
以上、フランチャイズ契約に関するご相談は是非当事務所をご検討ください。