2020年の民法の改正により賃貸借契約に関する規定も多数改正されました。
改正された条文の中には、従来の裁判例で認められていたことが明文で整備されたものもあります。
このような判例法理が明文化された部分は、契約書の見直しポイントが少ない場合が多いと思われます。
これに対し、新しく新設された条文は、新たな対応をとる必要があります。
以下、民法の改正に伴い、賃貸借契約書の見直すべきポイントを大きく二つ述べます。

1 修繕義務に関する点

改正民法607条の2は、従来の条文にはなかった条文です。
この条文により、賃借人によって賃貸物が修繕できる場面が2つ認められることになりました。
つまり、本来、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕は、賃貸人が行うべきでありますが、例外的に賃借人が修繕をすることができる場合が認められることになりました。

賃借人に修繕が認められる要件は、

①賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき

②急迫の事情があるとき

です。そして、この要件を満たし、賃借人が賃貸物の修繕を行った場合、修繕に要した費用は、後に賃貸人が支払うことになります。

そのため、同条により修繕費用の回収見込みが高まることから、賃借人の側からすると、賃貸物の修繕を行うことのハードルが下がったといえます。
つまり、賃借人からすると、賃貸人が修繕を行ってくれない場合等に修繕を行いやすくなったといえます。
他方、賃貸人からすると、より安く修繕できたにもかかわらず、賃借人が費用を気にせずに修繕を行ったことにより余分な出費になってしまうということがありえます。

そこで、同条との関係を考慮し、修繕に関する点は、契約書の見直しを行うべきです。

具体的には、賃借人が修繕を行う場合、賃貸人との間で修繕工事の内容や修繕費用の事前協議が必要であることを契約書に盛り込んでおくべきです。
これにより、不測の修繕費用が発生することが防げます。
また、協議を行うことにより、賃借人主導の修繕ではなく、賃貸人が主導して修繕を行うことも可能となりえます。

2 根保証に関する点

実務上、賃貸借契約の締結に伴い、賃料の未払い分や原状回復費用の担保のため、賃借人に保証人を要求するケースは多いです。
もっとも、賃貸借契約における保証は、根保証になっていることが圧倒的多数でありますが、この根保証に関する規律が民法の改正で大きく変わりました。

まず、根保証は、極度額を定めなければならなくなりました(民法465条の2)。
これにより、従来は、金額を定めずに保証人を立てることが一般的でしたが、保証人が保証する上限の金額を契約時に定める必要が生じました。
仮に、極度額を定めなかった場合は、保証の効力が生じないことになります。
よって、この点は、重大な改正点となります。
なお、極度額は、賃料の〇ヶ月分とするのではなく、具体的な金額を定めておくべきです。

また、個人根保証契約における元本確定事由が規定されました(民法465条の4)。
これにより、元本確定事由が発生した場合、確定した元本以上の保証がなされないことになります。
そのため、元本確定事由が生じた後、新たに保証人を要求するのであれば、契約書に盛り込んでおく必要があります。

さらに、改正民法では、債権者の保証人対する情報提供義務の規定が置かれました(民法458条の2)。
そのため、保証人から求められた場合は、民法に従った情報提供を賃貸人が行う必要があります。

また、事業用不動産の賃貸借の場合、賃料債務は、「事業のために負担する債務」に該当するため、賃借人が保証人に対し、財産状況等の情報を提供しなければならない条文も新設されました(民法465条の10)。
そのため、事業用不動産の賃貸借の場合、賃借人が保証人に対して、必要な情報を提供したことを賃貸借契約者の中で盛り込んでおく必要があります。
仮に、賃借人が保証人に対して情報提供をしていないと、事後的に保証契約が取り消されることがあります。

その他、見直すべきポイントはありますが、以上が賃貸借契約書の見直しの大きなポイントです。
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