目次
1 売買契約書に必要な記載事項
売買契約書の必要な記載事項はおおむね以下の通りです。
(1) 当事者の表示
売主と買主を明確に示します。売買契約書において最も基本的な項目であり、当事者を正確に記載することで、契約の有効性や履行の確実性を高めます。法人の場合は名称や代表者、所在地、連絡先を、個人の場合は氏名、住所、連絡先を記載します。
(2) 売買の対象
商品の名称、数量、型番、製造番号など、目的物を特定できる情報を記載します。これにより、誤解やトラブルを防ぎます。特に型番や仕様が異なる場合は、詳細を記載することが重要です。
(3) 売買代金と支払い方法
金額、支払時期、支払方法(現金、振込など)を具体的に定めます。例えば、支払期限や分割払いの条件を明記することで、双方の責任範囲を明確にします。
(4) 目的物の引き渡し
商品の引き渡し期日、場所、方法を定めます。さらに、運送費用や保管費用等の実費の負担についても取り決めます。これにより、契約履行における混乱を防止できます。
(5) 手付金
手付金を定める場合、手付金の金額や支払条件を記載します。解約手付にする場合は、解除に関するルールも盛り込んでおいたほうがより良いです。
(6) 契約違反による解除と違約金
契約違反時の対応を明記します。具体的には、契約を一方的に解除できる条件や、その場合に発生する違約金の金額や計算方法を記載します。例えば、買主が代金を期限内に支払わない場合や、売主が商品を期日までに引き渡さない場合など、具体的な違反行為とその対応策を詳細に定めます。
(7) 所有権移転の時期
いつ所有権が移転するかを定めます。売買契約成立時、代金支払い時、または引き渡し時など、具体的な条件を記載します。
(8) 検査に関する事項
検査とは、商品が契約条件に適合しているかを確認する作業を指します。この項目では、検査方法や検査を行う期間を明確に定めます。例えば、買主が商品受け取り後にどの程度の期間内に検品を完了させる必要があるのか、またその結果を売主に通知する期限を具体的に記載します。
(9) 契約不適合責任
契約不適合責任とは、売買契約で取り決めた品質や数量などに商品が適合しない場合、売主が負う責任のことです。この責任に基づき、品質不良や数量不足などの問題が発生した際に、どのように対応するかを定めます。たとえば、買主が補償を受けられる条件や、売主による商品の修理、交換、または返金の手続きについて具体的に記載します。
(10) 危険負担
危険負担とは、商品の引き渡し前に生じた滅失や毀損に対する責任の所在を明らかにする制度です。この項目では、例えば事故や災害などで商品が破損または消失した場合に、売主と買主のどちらがその責任を負うかを定めます。具体的には、商品の保管場所や運送中に発生するリスクが誰に帰属するかを明確に取り決める内容を含みます。
2 売買契約書の見直しのポイント
(1) 契約不適合責任
新民法では、従前、瑕疵担保責任とされていたものが、契約不適合責任というものに改められました。これにより売買契約における買主は、種類、品質、数量に契約不適合がある場合、修補、代替物の引き渡し等の履行の追完を請求できることになります(民法562条)。
よって、まず売買契約書の見直しのポイントとしては、従前、瑕疵担保責任とされていた「隠れた瑕疵」などの文言を「契約不適合による責任」「契約の内容に適合しない状態があること」などに変更することが挙げられます。
(2) 代金減額請求
新民法では、契約内容に不適合がある場合、代金の減額請求が明文化されました。
買主が相当の期間を定めて不足している物の引き渡し等を求めたにもかかわらず、売主が履行を完了させない場合は代金の減額請求が可能となります(民法563条1項)。また、履行の追完が不能である場合や売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したときなどは、催告をせずに代金の減額請求が可能となります(民法563条2項)。
そして、民法上に定められていることではありますが、売買契約書上も代金の減額請求が可能となる場合を明示しておくことが見直しのポイントなります。
また、後の紛争予防の観点から売買の目的物の価額に変動がある物の場合などは、いつの時点の価額を基準に減額するのか明示しておくこともポイントとなります。たとえば、契約時点の価額にするのか、引き渡し時点、代金減額請求の行使時点など、明確にしておけば余計な紛争を防止できます。
(3) 解除の点
従前の売買契約書のひな型には「〇〇の場合、買主は本契約を解除することができる。」と記載されているものが多々ありました。
もっとも、新民法では、民法564条で準用される541条、542条により、催告をした後に解除が可能な催告解除と催告なしに解除できる無催告解除に関する規律が定められています。
そのため、売買契約書上も解除の規律を催告解除と無催告解除に分けて明文化するべきです。
よって、催告解除と無催告解除とに分けて明文化しているかは、売買契約書の見直しのポイントとなります。
なお、民法上、軽微な不履行の場合には解除ができないとなっています(民法541条ただし書)。そのため、売買契約書に軽微な不履行でも解除が可能との記載がなければ、解除ができないことになります。よって、軽微な不履行でも解除可能とするのであれば、この点も見直すべきポイントとなります。
(4) 目的条項の定め
売買契約の目的物が契約内容に適合しているか否かの契約不適合責任は契約内容から判断されることになります。
そこで、従前の売買契約においては、契約の目的を定める目的条項を定めることが多くなかったと思われますが、今後、売買契約においても目的条項を定めることを検討すべきです。
使用する目的なのか、転売目的なのか、中古品の場合に現状のままで渡せばよいのか、性能にも着目したものなのかなど、今後、売買契約の内容にマッチした契約の目的条項を定めることも検討すべきとされています。
3 契約書作成を弁護士に依頼する場合の費用
当事務所では、売買契約書の作成について受任しております。
通常の売買契約書など基本的なものであれば10万円程度から受任しており、複雑なものの場合でも相談に応じて費用をお見積りさせていただきます。
4 当事務所でサポートできること
売買契約といっても、商品などの動産、土地・建物のような不動産など、目的物が異なります。
また、一回の契約ではなく、取引基本契約や継続的契約など、様々な方法の売買契約があります。
上記のほかにも売買契約書の作成には注意すべきポイントがあります。
当事務所では売買契約書の作成、確認(リーガルチェック)を行っております。ヒアリングを行い、貴社の実情に沿ったアドバイスをさせていただきます。
契約書の法的問題についてはぜひ当事務所にご相談ください。