1 契約不適合責任

新民法では、従前、瑕疵担保責任とされていたものが、契約不適合責任というものに改められました。これにより売買契約における買主は、種類、品質、数量に契約不適合がある場合、修補、代替物の引き渡し等の履行の追完を請求できることになります(民法562条)。
 よって、まず売買契約書の見直しのポイントとしては、従前、瑕疵担保責任とされていた「隠れた瑕疵」などの文言を「契約不適合による責任」「契約の内容に適合しない状態があること」などに変更することが挙げられます。

2 代金減額請求

新民法では、契約内容に不適合がある場合、代金の減額請求が明文化されました。
買主が相当の期間を定めて不足している物の引き渡し等を求めたにもかかわらず、売主が履行を完了させない場合は代金の減額請求が可能となります(民法563条1項)。また、履行の追完が不能である場合や売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したときなどは、催告をせずに代金の減額請求が可能となります(民法563条2項)。
そして、民法上に定められていることではありますが、売買契約書上も代金の減額請求が可能となる場合を明示しておくことが見直しのポイントなります。
また、後の紛争予防の観点から売買の目的物の価額に変動がある物の場合などは、いつの時点の価額を基準に減額するのか明示しておくこともポイントとなります。たとえば、契約時点の価額にするのか、引き渡し時点、代金減額請求の行使時点など、明確にしておけば余計な紛争を防止できます。

3 解除の点

従前の売買契約書のひな型には「〇〇の場合、買主は本契約を解除することができる。」と記載されているものが多々ありました。
もっとも、新民法では、民法564条で準用される541条、542条により、催告をした後に解除が可能な催告解除と催告なしに解除できる無催告解除に関する規律が定められています。
そのため、売買契約書上も解除の規律を催告解除と無催告解除に分けて明文化するべきです。よって、催告解除と無催告解除とに分けて明文化しているかは、売買契約書の見直しのポイントとなります。
なお、民法上、軽微な不履行の場合には解除ができないとなっています(民法541条ただし書)。そのため、売買契約書に軽微な不履行でも解除が可能との記載がなければ、解除ができないことになります。よって、軽微な不履行でも解除可能とするのであれば、この点も見直すべきポイントとなります。

4 目的条項の定め

売買契約の目的物が契約内容に適合しているか否かの契約不適合責任は契約内容から判断されることになります。
そこで、従前の売買契約においては、契約の目的を定める目的条項を定めることが多くなかったと思われますが、今後、売買契約においても目的条項を定めることを検討すべきです。
使用する目的なのか、転売目的なのか、中古品の場合に現状のままで渡せばよいのか、性能にも着目したものなのかなど、今後、売買契約の内容にマッチした契約の目的条項を定めることも検討すべきとされています。

以上のほかにも売買契約書の作成には注意すべきポイントがあります。
当事務所では売買契約書の作成、確認(リーガルチェック)を行っております。
ヒアリングを行い、貴社の実情に沿ったアドバイスをさせていただきます。
契約書の法的問題についてはぜひ当事務所にご相談ください。

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