会社が求める業務遂行能力がない、能力があるにもかかわらず能力を発揮しない、社会人としての最低限のマナーが身についていない。

このような社員の対応に苦慮することはないでしょうか。

従業員の勤務不良や能力不足に悩まされる経営者は少なくありません。

 

そして、就業規則に「勤務成績が不良」「労働能率が著しく低く、向上の見込みがない場合」などの解雇事由を定めていることは多々あります。

これらのような解雇事由に該当するとして、勤務不良・能力不足を理由に従業員を解雇することが可能なのでしょうか。

 

結論として、就業規則の定めがあったとしても、容易には解雇は認められません

 

裁判例は、平均的な水準に達していないというだけで解雇が可能とするのは相当でなく、著しく能力が劣り、向上の見込みがない場合に限って解雇が可能と判断するものや、会社から排除しなければ重大な損害を与える程度の場合などと簡単に解雇を認めません。

 

また、多くの裁判例では、きちんと指導・教育したことが重視されています

会社としては、もし解雇まで考えていても指導・教育を尽くしたことが求められます

研修等の教育の機会を十分に与えることも検討すべきでしょう。

 

つまり、指導・教育を尽くしていない場合は解雇が認められないと考えておいた方が無難です。

もっとも、いくら指導を尽くしたとしても、合理的な指導・教育を行ったことを証拠化しておく必要があります。

たとえば、①求められている職務内容を明確にし、マニュアル化する②マニュアル通りに遂行するように指示・教育する③他の社員が遂行できるのに本人ができなかった理由を報告させる④改善方法を指導するなどを行い、これらを逐一書面化して証拠化しておくことです。

このような指導を記録化して積み重ねることで初めて解雇が可能となります。

解雇までお考えの場合、どうような指導を行い、どのような証拠を残しておくかの準備が必要です。

 

さらに、職場環境上、勤務難易度の低い業務に配置転換が可能な場合は、配置転換を行い、指導を行うことも重要です。

配置転換により難易度の低い業務に従事させ、それでも業務遂行ができず、指導・教育をさらに尽くしても業務遂行が困難ということになれば解雇が認められやすくなることになります。

 

以上のように、解雇を行うには指導・教育を尽くさなければならないなどの制約があり、容易に解雇はできません。

もっとも、解雇が認められない場合でも、他の懲戒処分や賞与等の査定で対応するという方法はあります。

 

当事務所では勤務不良・能力不足の社員対応を行っております。

問題社員の対応は、当該社員の勤怠の状況や会社の業務等により個別的な対応が必要です。

また、会社が解雇を望んでいても、解雇という手段を用いるのが危険な場合もあります。

このような場合、他の懲戒処分等によることや、指導・教育の方法や証拠化についてアドバイスさせていただきます。

問題社員対応にお困りの場合は、当事務所にご相談ください。

関連記事はこちら