社員が法に触れる犯罪行為をしてしまうということは多々見られます。
社員が犯罪行為をした場合、会社としては、社員の刑事的責任も踏まえて、労務の問題、民事上の問題を検討すべきことになります。
目次
社員が会社の財産を横領した場合
社員が会社の財産を横領した場合、まず検討すべきは社員の民事的責任です。
事実の調査を行い、横領した金額を確定するのが先決です。
そして、本人がどのように弁償するのか、身元保証人にも弁償をさせるのかを検討すべきです。
そのうえで、懲戒解雇等の労務上の問題を検討します。
なお、懲戒処分は、就業規則に定めている範囲でしかできません。
懲戒処分を規定していない就業規則を利用しているということはないと思いますが、懲戒処分の前には就業規則の確認が必要です。
そして、社員に刑事的責任を取らせるのであれば告訴も合わせて検討すべきことになります。
なお、横領した証拠が明白で社員が横領の事実を認めている場合は特に問題が少ないと思われますが、社員の横領事例で注意すべきは、横領の事実を否定する可能性があり、証拠が不十分な場合です。
会社側が横領の事実に確信があったとしても、証拠が不十分であれば後に紛争になる可能性があります。
また、できる限り証拠を集めて社員に追及すべきですが、言い逃れられるケースもあります。
社員に証拠を見せる際は、事実を確認させ認めさせるのか、疑惑に説明を求めるかなどの事前のシュミレーションが必要です。
以上、社員が横領した事例でも証拠によって慎重に対応を検討すべきです。
社員が飲酒運転をした場合
通常、飲酒運転をした場合、多くの場合は酒気帯び運転で処罰されます。
まれに酒酔い運転で処罰されることもありますが、多くの場合は酒気帯び運転です。
酒気帯び運転で処罰される場合、罰金刑として処罰されることが多数です。
もっとも、近年、高知県では、酒気帯びで事故を起こした場合、罰金刑ではなく、公判請求(正式裁判)をされる傾向にあります。
ただ、裁判をされても多くの場合は執行猶予判決となります。
そのため、裁判されたからといって刑務所に行かされることは少ないです。
そして、社員が酒気帯び運転をした場合、会社が検討すべきは懲戒処分です。
懲戒処分を行うにあたり注意すべきは、就業規則の確認です。
就業規則にない懲戒処分はできませんので、就業規則の確認は必須です。
また、懲戒解雇などの重い懲戒処分を行う場合は注意が必要です。
ドライバー等の車を扱う仕事であれば懲戒解雇でも有効となりやすい傾向にありますが、車の運転が必須でない業種は懲戒解雇が重すぎると評価されることもあります。
社員が逮捕された場合
社員が傷害やわいせつ事犯などの何らかの罪を犯し、逮捕されることもあります。
犯罪の事実が新聞で報道されるということもあります。
会社としては、新聞報道までされた場合、直ちに社員を解雇したいと思うケースもあると思います。
もっとも、罪を認めているケースでも解雇まで行うのはリスクがあります。
解雇は非常に厳格な処分ですので、裁判の結果が出てから行うのがベターです。
もし早期に辞めてもらう場合でも、留置されている警察署に面会に行き、自主退職を促すべきです。
そして、犯罪行為によって懲戒解雇した場合に問題となるのが、退職金の問題です。
退職金規定に懲戒解雇の場合に退職金を支給しないとしていても、全部不支給は違法とされることがあります。
判例上、退職金不支給の規定があったとしても、退職金の全部不支給は「従業員のそれまでの勤続の功を抹消するほどの著しい背信行為があった場合」に限定されます。
よって、退職金の不支給は慎重になすべきです。
以上、社員が犯罪行為を行った場合、検討すべき法的課題は多数あります。
当事務所は、社員が犯罪行為を行った場合を含めて労務問題に注力しております。
法的リスクを残さないためにも、労務問題に関するご相談はささいなことでも結構ですので当事務所をご検討ください。