会社にとって問題を有する社員を問題社員というとすれば、その問題別に問題社員を類型化することができます。

大きく分けると、
①問題のために辞めてもらわなくてはならない問題社員
②問題が改善されさえすればよい問題社員
に分けられます。


問題のために、辞めてもらわなくてはならない問題社員とは、たとえば犯罪行為を行った社員、問題の改善を何度も警告しているにもかかわらず、改善の見込みのない社員が考えられます。
この場合、そもそも解雇が可能なのか、解雇できるとしても手続に違法がないようにするなど、後に解雇無効と争われることのないように注意する必要があります。

まず、懲戒解雇を行うには就業規則に懲戒解雇ができる旨及び解雇事由を規定しておく必要があります。
もっとも、仮に、「刑法犯に該当する犯罪行為を行った場合、懲戒解雇とすることができる」という就業規則があったと場合でも、軽微な犯罪の場合にいきなり懲戒解雇とすることは危険です。
後に解雇無効を争われる可能性があります。

判例上、社員が犯罪行為を行ったとしても、会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に認められる場合に懲戒解雇が可能とされており、当該行為の性質・情状、会社の事業の種類・態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針、その従業員の会社における地位・職種等を総合的に考慮して検討しなければなりません。

なので、飲酒運転で検挙されたから即懲戒解雇可能と考えるのは危険です。
場合によっては後に解雇無効と訴えられることもあります。
したがって、たとえ犯罪行為を行った社員がいたとしても、懲戒解雇は、事実を調査し、上記判例の要件に該当するか検討して行う必要があります。


次に、問題を改善してくれさえすればよい問題社員は、たとえばセクハラ・パワハラに代表されるハラスメントを行う社員、無断欠勤や服装、髪形などの職場のルール違反を犯す社員が考えられます。

この場合、問題を改善させるためのルール(規定)を作成すること、社員にルールを周知すること、ルール違反の場合の懲戒処分の規定、適切な懲戒処分の行使などが必要です。
また、改善の見込みがない場合には解雇も検討しなくてはならないので、将来の解雇に備えた対応も必要です。

たとえば、服装、髪形等に問題のある社員について、いきなり懲戒解雇が可能となるケースは稀ですので、改善を求めていくことになります。
この場合、職場の服務規律を遵守するように抽象的に求めるよりは、服装、髪形等の身だしなみに関する規定を整えて、順守させることのが良い方法です。
もっとも、服装、髪形は本来個人の自由に属するものであります。

そのため、たとえ服装、髪形のルールを規定し、違反者に懲戒処分の規定をおいたとしても、
①目的、趣旨が不明確な規定
②規制が広すぎる規定
③規制が厳しすぎる規定
などは問題です。

後に、規定に基づいて懲戒処分をしたにもかかわらず、懲戒処分が違法とされるリスクがあります。
企業の品位保持や顧客に与える不快感など、会社側が服装、髪形を制限する必要はありますが、あまりに広い規定や厳しすぎる規定は見直す必要があります。

また、実際には多くの社員が守っていないのに、特定の社員のみに懲戒処分を課すことは違法とされる場合があります。
懲戒処分を行う場合は、特定の社員のみに行うなど、不公平とならない運用をすべきです。

以上、社員の問題行動を防止するには、ルールを規定すること、適切に運用することが必要です。
また、問題行動を起こした社員に改善を促すにも、まずはルールが必要であり、適切な懲戒処分が可能な仕組みを作っておく必要もあります。

さらに、懲戒解雇を行う場合はより慎重に行うべきです。
就業規則の懲戒解雇事由に該当するからといって、安易に懲戒解雇としてしまうと、後に解雇無効の紛争に発展することがありえます。

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