☑従業員が退職後にライバル企業に就職する。
☑従業員が退職後に同業の事業を行い、顧客を奪われた。
こういった事例はよく見かけられます。
そこで、就業規則に「〇年間は会社の事業と競合する事業を行ってはならない」とする競業禁止条項をいれているものがよくあります。
このような競業禁止条項の妥当性について考えたいと思います。
まず、退職後といえども従業員の方には憲法上保障された職業選択の自由があります。
そのため、退職後、無制限に特定の業種に従事してはならないとしたとしても、職業選択の自由に反しますので、その就業規則が有効と認められることはないでしょう。
よって、無制限に競業を禁止することはできないと考えられています。
もっとも、会社としても退職後の競業を禁止することに合理的な理由がある場合は、競業禁止を認めるべきだとも考えられています。
そこで、裁判例は、①使用者側の正当な利益の保護②労働者の退職前の地位③競業が禁止される業務の内容、期間、地域の範囲④代償措置の有無等の事情を判断して競業禁止の有効性を決めるべきとしています。
たとえば、単に競争相手となり、売上が減少するという程度では①正当な利益の保護とは評価されにくいでしょう。
少なくとも、重大な営業秘密の保護、重要顧客の不当な奪取を防止する等でなければ難しいといえます。
また、重大な営業秘密に触れうる立場の者や重要顧客を不当に奪取しうる地位にある方でないと競業禁止とするのは難しいといえます。
全ての従業員とすることはよほどのことでない限り認められないでしょう。
さらに、競業する業務の全てを禁止、不必要・不相当な長期間の制限、地域無限定での競業禁止は認められにくく、割増退職金などの代償措置がない場合も難しいでしょう。
競業禁止を有効とするためには、裁判例の基準に沿ったものにする必要があります。
仮に、競業禁止義務が有効な場合は、会社側が競業を禁止する差止請求を行うことが可能です。
裁判例では1年間、2年間等の一定期間に限り差止を認めたというものがあります。
また、競業禁止が有効な場合は、損害賠償請求を行うことも可能です。
ただ、損害賠償請求が可能としても会社にどのくらいの損害が発生したかの立証は難しいと思われます。
対策としては、競業禁止に反した場合には会社にいくらの損害賠償を支払うということを事前に定めておく損害賠償の予定によるのが相当だと思われます。
以上、競業禁止を有効とするためには法的判断が必要不可欠です。
特に、どうしても守りたい会社の利益と競業禁止とのバランスを取ることが重要です。
また、就業規則等で競業禁止を定めておらず、退職後に競業行為を行われた後に対応することは、職業選択の自由との関係で原則難しいです。
もし競業禁止の制限をつけることを考えていらっしゃる場合は、就業規則等の事前の対応が必要不可欠です。
当事務所では競業禁止の問題について扱っております。
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