
目次
退職勧奨のポイントや注意点について弁護士が解説
企業を経営していると、能力不足や勤務態度の問題を抱える従業員に対して、「このまま雇用を続けることは難しい」と判断せざるを得ない場面が生じることがあります。
そのような局面で有効な選択肢となるのが「退職勧奨」です。
ただし、進め方を誤ると損害賠償請求を受けるなど、深刻なトラブルに発展するリスクがあります。
本記事では、退職勧奨の正しい進め方と注意点について詳しく解説します。
退職勧奨とは
退職勧奨とは、会社が従業員に対して退職を促し、双方の合意によって雇用契約の終了を目指すものを指します。
会社が一方的に雇用契約を終了させる「解雇」とは異なり、あくまで労使双方の合意に基づく点が最大の特徴です。
解雇は正当な理由がなければ不当解雇と判断されるリスクが高く、正当な理由も通らない場合があります。
一方、退職勧奨は正しいプロセスを踏んで合意に至ることができれば、そうした法的リスクを大幅に軽減できます。
もっとも、退職勧奨を行うこと自体に特別な法的制限はありませんが、やり方を誤ると「退職強要」とみなされる危険性があるため、慎重な対応が求められます。
退職勧奨の具体的な進め方
退職勧奨をスムーズかつ適法に進めるためには、以下の手順を踏むことが重要です。
① 社内での方針共有
社長個人の独断ではなく、直属の上司や幹部を含めた会社全体の意思であることを示すため、事前に関係者間で意見をすり合わせておきましょう。
② 退職勧奨の理由をまとめたメモの作成
面談本番で冷静かつ説得力をもって説明できるよう、退職を求める理由やこれまでの指導経緯を事前に整理しておきます。
③ 個室での面談
プライバシーに配慮し、会議室などの個室で実施します。
④ 会社の意向を明確に伝える
退職してほしいという会社の意向を、誠実かつ明確に伝えます。
⑤ 回答期限を設けて検討を促す
その場での即答を求めず、家族への相談などの時間を考慮した上で次回の面談日を設定し、じっくり検討するよう促します。
⑥ 退職条件の交渉
従業員が退職に前向きな姿勢を示した場合は、退職日や退職金の上乗せ(解決金)、有給休暇の消化方法などの処遇について具体的に話し合います。
⑦ 退職届と退職合意書の取り交わし
合意に至った場合は、会社都合による退職である旨を記した「退職届」を提出させるとともに、未払い残業代請求やハラスメントの訴えといった事後トラブルを防ぐために「退職合意書」を締結します。
退職勧奨をする際の注意点
以下の3つのNG行動には絶対に注意してください。
「退職届を出さなければ解雇する」という発言
客観的に解雇できるだけの正当な理由がないにもかかわらず、このような発言によって退職届を提出させた場合、従業員が誤信して退職したものとして、退職の合意自体が無効と判断されるリスクがあります。
退職に追い込む目的での配置転換や業務の取り上げ
「追い出し部屋」への隔離や業務の剥奪といった嫌がらせのような行為は、不法行為とされるリスクがあります。
特に、退職勧奨に応じない限り、不当な処遇をするというような行為をしてしまうと不法行為となるリスクが高くなります。
長時間・多数回にわたる面談
1回あたり2時間を超えるような長時間の面談や、常識的な限度を超えて繰り返し行われる執拗な面談は、許容範囲を超えた「退職強要」とみなされるおそれがあります。
明確に退職を拒否した場合は、それ以上、退職勧奨を続けるべきではありません。
面談での適切な話し方
面談においては、従業員の人格を否定するような言葉は絶対に避け、「会社と従業員のミスマッチ」という観点から話を進めることが重要です。
例えば、「これまで何度も指導し、配置転換などの機会も設けてきたが、改善が見られなかった」という客観的な事実を踏まえ、「社内で協議を重ねた結果、あなたにはこの会社が合っていないと判断し、退職をお願いしたいと考えている」と、冷静かつ誠実に伝えます。
従業員から反発や反論があった場合も、事前に準備したメモをもとに、退職を求める本音の理由を誠実に説明します。
その際、「解雇になる」と脅すのではなく、解決金や再就職支援などの条件を提示して退職後の不安を和らげ、納得を引き出すことに注力してください。
なお、「不当な圧力をかけられた」といった事後トラブルを防ぐため、面談の内容は録音しておくことが推奨されます。
退職勧奨を拒否された場合の対応
従業員から明確に退職を拒否された場合、同じアプローチで説得を続けることは、トラブルを招く原因になりかねません。
まずは拒否の理由を分析し、対応策を見直すことが必要です。
退職理由に納得していない場合
会社からの指導が不十分で、本人に「問題がある」という自覚が生まれていないケースです。
退職勧奨を停止し、業務上の問題点を明確に指摘する指導や懲戒処分のプロセスを適切に踏むことで、本人の自覚を促すことが先決です。
退職後の生活への不安がある場合
扶養家族がいる、年齢的に再就職が難しいといった事情から拒否しているケースです。
退職金の上乗せ額を増やしたり、有給消化期間中の就職活動を認めたりするなど、金銭的・制度的な条件を再検討しましょう。
担当者との感情的な対立がある場合
面談担当者への反発から意固地になっているケースです。
担当者を交代させるか、弁護士を代理人として介入させることで、第三者的な立場から冷静な話し合いが可能になります。
従業員への退職勧奨にお悩みの経営者様へ
問題社員への対応は、社内の雰囲気を悪化させるだけでなく、経営者や人事担当者の多大な時間と精神力を消耗させます。
取り返しのつかない状況になる前に、専門家に相談することが解決への近道です。
弁護士に相談するメリット
退職勧奨について弁護士に相談することで、以下のようなメリットが得られます。
最適な戦略とプロセスの構築
従業員の状況やこれまでの経緯を整理・分析し、合意を得るために必要な事前対応(指導・配置転換など)や面談の進め方について、具体的なシナリオを立案します。
トラブルを防ぐ退職合意書の作成
退職後の未払い残業代請求やハラスメント被害の訴えといった二次トラブルを防ぐため、「清算条項」「誹謗中傷禁止条項」「口外禁止条項」などを盛り込んだ退職合意書を作成しておくべきです。
藤宗本澤法律事務所にご相談いただくメリット
藤宗本澤法律事務所では、これまで多数の企業様から労働問題・問題社員対応に関するご相談をお受けしております。
退職勧奨に「これをすれば必ず成功する」という画一的な方法はありません。
当事務所にご相談いただければ、対象となる従業員の性格や社内での立ち位置、企業の経営状況などを踏まえた上で交渉戦略を構築します。
法的リスクを最小限に抑え、企業が本来の事業活動に専念できるようサポートいたします。
問題がこじれてしまう前に、ぜひ一度、当事務所へご相談ください。
関連記事はこちら
- 労働基準監督署(労基署)に通報された場合、会社はどうなる?とるべき対応について弁護士が解説
- ローパフォーマー社員とは?企業が取るべき対応と注意点
- 試用期間に従業員を解雇するための方法は?弁護士が解説
- 会社の指示に従わない社員についての対応
- 試用期間のその他の論点
- 従業員の引き抜きの防止
- 退職後の競業禁止について
- コロナ禍における解雇
- 安全配慮義務 ~長時間労働とハラスメントについて~
- 休職・復職を繰り返す社員への対応
- 退職代行業者に対する対応
- 試用期間中の本採用の見送りについて弁護士が解説
- 内定の取消しの法的問題
- 整理解雇の留意点
- 労働審判
- 残業代の問題
- 類型別問題社員の対応
- 問題社員とは?類型別の特徴や対応方法について弁護士が解説
- パワハラ防止法に備え企業が取るべき対応策